ご紹介, 所蔵(孝四郎)
『アヴェ・マリア』欧米樂譜出版社
2022/02/01
『アヴェ・マリア』欧米樂譜出版社。
映画《Mad About Music》(1938)の「主題歌」、「口笛が大好き」と「アヴェ・マリア」の楽譜。
映画は、映画検索サイト「KINENOTE」に項目はないものの、同年公開の「年ごろ」の紹介に「アヴェ・マリア」として言及があり、ネット・オークション情報に挙がっている『新潟松竹館週報』に同じ写真が掲載されている。新潟県在住と思しき人物のブログにも「アヴェ・マリア」と記載されていることから、1939年に上映されたのではないかと推察する。
新潟松竹館週報 昭和14年4月1日号
「新潟松竹館」とは、「消えた映画館の記憶」サイトの、新潟市の映画館(
https://hekikaicinema.memo.wiki/d/%bf%b7%b3%e3%bb%d4%a4%ce%b1%c7%b2%e8%b4%db)に掲載されている「松竹映画館」のことであろう。
ストーリーは、女優としての成功と引き換えに、14歳の娘(ディアナ・ダービン)の存在を隠していた女性が、娘の機転と偶然出会った指揮者の助けをきっかけに、その存在を公にし、大団円となる、というもの。
「アヴェ・マリア」(J.S.バッハ/グノー)は音源のみだが、「口笛が大好き」を歌う場面は観ることができる。
「アヴェ・マリア」
https://www.youtube.com/watch?v=ppn0kEfiwDE
「口笛が大好き」
https://www.youtube.com/watch?v=WvHW_ecyCbs
ディアナ・ダービン(1921-2013)はカナダ人の女優、歌手、1930~1940年代にハリウッド映画で活躍した(KINENOTE : http://www.kinenote.com/main/public/cinema/person.aspx?person_id=2351&key_search=%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%B3%EF%BC%89%E3%80%82)
ディアナ・ダービンと言えば、日本で圧倒的に有名なのが、1年前に制作された《オーケストラの少女》(http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=1226)であろう。
今でもクラシック音楽映画の名作として上映される機会がある(東京都写真美術館サイト:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-3323.html)。
おそらく少女時代にこの映画を観る機会があり、いたく感銘を受けた展子は、名場面を元子に語り聞かせるのみならず、ディアナ・ダービンの十八番を元子にも歌わせることにした。たとえば、モーツァルトの「アレルヤ」である。
ディアナ・ダービンがモーツァルトの「アレルヤ」を歌う場面。
https://www.youtube.com/watch?v=wSo88XUMZZ8&t=485s
展子同様、絶対音感を持ち、ハイソプラノだった元子は、母が喜んでくれるので、嬉々として歌っていた。展子は、ダービンが帽子の羽によって、隠れても存在が知れてしまうという演出のアイデアも大層気に入ったようで、そのことは写真のなかの当時の元子の扮装が物語っている。もっとも、日本には羽が垂直についているタイプはなかったようで、 元子が被っていたのは、ただのベレー帽であった。